Dance with Agents

絵7枚と一晩11時間で、手元のMacは自作キャラクターを描けるようになった。ただし髪型は揺れた

漫画を作ろうとして、最初に当たった壁は絵の善し悪しではありませんでした。同じキャラクターが、毎回べつの顔で生成されることです。

対処法そのものは『画像生成AIでイラストの一貫性がいちばん強く保たれるのはLoRA、手軽に済むのは見本の画像を渡す方法』にまとめてあります。ただしその記事は仕組みの話で止まっていて、実際にどれだけの材料と時間がかかるのかは書いていません。

そこを、管理人の手元のMacで実際に測りました。2026年7月のことです。

学習させる絵は、画像生成AIに作らせた

LoRA(ローラ)は、キャラクターの特徴を覚え込ませた小さなファイルです。画像生成AIの本体には手を触れず、描かせるときだけ重ねて使います。

覚えさせるには、そのキャラクターの絵が何枚か要ります。ここで詰まりました。覚えさせたいキャラクターの絵が、まだ1枚も存在しないからです。 描けるなら苦労していません。

採ったのは、先に手軽な方法で材料を作り、それを強い方法に食わせるという順番でした。

  1. 文章だけを頼りに、見本の絵を1枚生成する
  2. その1枚を見本として渡しながら、ポーズと表情を変えた絵を12枚生成する
  3. そこから5枚を選び、別の2枚を加えた計7枚で学習させる

2番目で使ったのが、『画像生成AIでイラストの一貫性がいちばん強く保たれるのはLoRA』で「手軽に済む」として紹介したIP-Adapter——見本の画像を、注文の文章と一緒に渡す仕組みです。正面・横顔・笑い・怒鳴り・驚き・走る・座って考える・泣き顔・斜めから・腕組み・手を振る・指差しの12通りを指示して、同じ顔立ちのまま描き分けさせました。

そして、12枚すべてを学習に使ってはいません。 実際に使ったのは、横顔・怒鳴り・泣き顔・斜めから・指差しの5枚です。選ぶ工程がここに入っています。

残りの2枚は、この12枚とは別に用意してあったファイルです。髪を短く刈った、いがぐり坊主の男の子——覚えさせたいキャラクターそのものの絵です。

つまり、いちばん手軽な方法を、いちばん強い方法の材料作りに使ったことになります。

土台に選んだのはanimagine-xl-3.1という画像生成モデルです(配布ページ)。SDXL(Stable Diffusion XL、広く使われている画像生成モデル)を、アニメと漫画の絵柄に寄せて作り替えた派生版にあたります。指示に添えたのは「モノクロの漫画のコマ、スクリーントーン、細い線画」といった言葉でした。

学習は800ステップ、11時間7分かかった

ステップは、学習を1回分進める単位です。用意した絵をモデルに見せ、ずれを測り、ほんの少し直す——これで1ステップ。今回は800ステップを指示しました。

その前に、10ステップだけの試運転を挟んでいます。 本番が何時間かかるか分からない以上、いきなり走らせるのは危ない。案の定、この試運転は途中で停止しました。設定を直して二度目でようやく最後まで通り、そこから本番へ進んでいます。

夜のうちに走らせ、翌朝には終わっていました。記録に残っている実測がこれです。

項目 実測値
学習させた絵 7枚
画像の大きさ 1辺1024ピクセル
ステップ数 800
1ステップあたり 約50秒
合計 11時間7分

1ステップ50秒という数字が、この記録でいちばん重い部分です。 800を掛ければ11時間になる。枚数を増やすより先に、時間のほうが壁になりました。

これはマシンの性質による差です。学習に使ったのはMacに載っているGPUで、画像生成のために設計された専用のGPUではありません。 同じ内容を専用機で走らせれば、桁がひとつ変わります。手元のMacで動かせるかどうかと、快適に動くかどうかは別の話でした。

かかったお金はありません。モデルも学習用のプログラムも無償で配布されていて、要るのは電気代だけです。その代わりに時間を払っています。

学習させていないポーズを描かせた

出来上がったのは、44メガバイトのファイル1つです。11時間の成果が、これに収まります。

試したのは、学習に使わなかったポーズでした。走る、腕を組む、逆立ちする。

このうち走ると腕組みは、12枚のほうには入っていたが、学習用の7枚には選ばれなかったものです。逆立ちはどちらにも存在しません。 一度も見せていない姿勢を指示して生成させています。

ここが、見本を渡す方法との分かれ目です。 見本を渡す方法は、渡した1枚に引きずられます。学習させたほうは、キャラクターの特徴と姿勢が切り離されるので、見せていない姿勢でも同じ人物として描けるようになる。 一貫性のためにわざわざ11時間を払う理由は、そこにあります。

呼び出しには合図の言葉を使いました。学習のときにsks_mangaboyという、普段の文章にはまず出現しない綴りをキャラクターに割り当てておき、描かせるときに同じ綴りを注文に含める。既にある言葉を合図に使うと、モデルが元から持っている意味と混ざってしまうため、意味を持たない綴りをあてがいます。

出来は「そこそこ」で、髪型が揺れた

管理人の見立ては、「そこそこ使えるかな、という程度」でした。

崩れたのは髪型です。指示していないのに、絵ごとに髪型が揺れます。

顔立ちや服まで揃っていたかどうかは、確かめていません。 揃っていたと言えるだけの確認をしていない、ということです。目についたのが髪型だった、という範囲の話として読んでください。

この状態では、本気の漫画には使えません。 管理人の言葉では「もっと鍛えないと」。同じキャラクターが何十コマも続く媒体では、髪型の揺れはそのまま別人に見えてしまいます。

ただし、取り組みとしては第一歩になったというのが管理人の評価です。7枚と11時間という分量は、手元で試すには十分で、作品に使うには不足という位置にありました。

ComfyUIは使っていない

画像生成を手元で動かす話でよく名前が挙がるのがComfyUI——処理の流れを箱と線でつないで組み立てる画面です。今回はこれを使わず、Pythonのプログラムを直接書いて走らせています。

理由は、やりたいことが「生成」ではなく「学習」だったからです。ComfyUIは生成の道具として広く使われていますが、今回の作業の中心は、7枚の絵から11時間かけてファイルを1つ作ることでした。手順が決まっていて、しかも一晩放置する種類の作業なので、画面で組むより、コマンド1行で始まって終わりまで走るほうが向いています。

ComfyUI自体は、この作業とは別に管理人のMacへ導入されています。そちらは配布されているLoRAを重ねて肖像画を生成する用途で、同じ「手元で動かす画像生成」でも、道具の選び方は目的で変わりました。

手元で動かすことの意味は、枚数ではなく時間で決まる

この試みで分かったことを3つに絞ります。

  • 材料は自分で用意しなくてよかった。 キャラクターの絵が1枚も無い状態から、画像生成AI自身に12枚作らせ、選んで学習させられた
  • 7枚でも、形にはなった。 数十枚を集める作業は発生していない。ただし髪型は揺れたので、作品に使うなら鍛え直しが要る
  • 時間だけは肩代わりできなかった。 一晩を丸ごと使い、そのあいだMacは他の作業に使えない

手元で動かす方式の代償は、お金でも枚数でもなく時間として現れます。 ここを見込んでおけば、寝ているあいだに終わらせるという使い方に落ち着きます。実際、この11時間はそういう時間の使い方でした。

そしてやり直すたびに、また一晩が要ります。 髪型を落ち着かせるには枚数もステップ数も増やすことになるので、次はもっとかかる。手元で鍛えるというのは、そういう単位の作業でした。

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