使う前に、5分だけ
道具は手に入りました。すぐ頼みたいところですが、先にこれを知っておくと、あとの体験がかなり変わります。
覚えることは2つだけです。トークンと、モデルの軽重。
トークンは、やり取りの分量の単位
エージェントとのやり取りは、文字数ではなく「トークン」という単位で数えられています。ざっくり言えば、単語や文字のかたまり1つが1トークンです。日本語なら1文字が1〜2トークンくらい、と思っておけば実用上は足ります。
大事なのは正確な換算ではなく、これが有限だということです。どのプランにも上限があり、使い切ると一定時間待つことになります。
落とし穴は「毎回、全部読み直されている」
ここがいちばん腑に落ちにくく、いちばん効くところです。
エージェントは、発言のたびに、それまでの会話全部をもう一度読み直しています。 前回の内容を覚えているのではなく、毎回まとめて読み返して答えている、という作りです。
つまり——会話が長くなるほど、1回の発言が高くつきます。 同じ「ありがとう」の一言でも、会話の始めと、2時間後とでは、消費がまるで違います。
割引がまったく無いわけではありません。裏側では読み直した部分を再利用する仕組み(プロンプトキャッシュ)が働いていて、単価のほうは下がっています。 それでも「長くなるほど高くつく」という話は変わりません。Anthropic公式のコスト解説にも「a one-line question in a session that has been open all day still draws usage for the whole conversation」——朝から開きっぱなしの会話では、一行の質問でも会話まるごとぶんの消費になる、と書かれています。安くなるのは単価だけで、読み直す量そのものは減らないからです。
だから、いちばん効く節約は難しい技ではありません。
話題が変わったら、会話をリセットする。 これだけです。
Claude CodeでもCodexでも、打つのは同じ/clearです。 Codexのコマンド一覧(OpenAI公式)にも「Clear the terminal and start a fresh chat(ターミナルをきれいにして、新しい会話を始める)」と載っています。
話は変わらないけれど会話が長くなってきた、というときは/compactです。それまでの内容を要約して、続きをやれる状態にしてくれます。 これもどちらにもあります(Codexの説明は「Summarize the visible chat to free tokens」)。
- 話題が変わった →
/clear(捨てる) - 同じ話の続き →
/compact(畳む)
この2つを使い分けられるようになると、消費がはっきり変わります。
モデルには、軽いものと重いものがある
エージェントの裏では、必ず何らかのAIモデルが動いています。そして軽くて速くて安いものから、重くて賢くて高いものまで選べるようになっています。
- 軽いモデル — 「これは何をするコマンド?」のような確認・質問向き。速く、減りも緩やか
- 重いモデル — 込み入った設計や、原因の分からない不具合の調査向き。時間もトークンもかかる
方針はひとつです。質問の重さと、モデルの重さを揃える。
軽い確認に一番賢いモデルを使う必要はありませんし、逆に難所を軽いモデルで粘るのも遠回りです。迷ったら真ん中から始めて、物足りなければ上げる、大げさだと感じたら下げる。 具体的な名前と使い分けはトークン節約のためのモデル選びにまとめました。
⚠️ いちばん最初にやるのは、モデルを決めることです
ここだけは、節約の工夫ではなく上限に直結する話なので、先に片付けてください。
一番重いモデルを選んだまま何にでも使うと、20ドルのプランでは驚くほど早く枠が尽きます。 前のステップで見た5時間の枠が、あっという間に来ます。同じ質問でも、選ぶモデルで減り方が数倍変わるので、ほかの工夫とは減り方の桁が違います。
最上位は「難所で出す切り札」です。具体的には、こういう場面で切ります。
- どう作るかを一緒に考えてもらうとき。 「この仕組み、どういう構成にするのがいい?」のように、答えが一つに決まらない相談
- 仕様を詰めるとき。 「こういう場合はどう動くべき?」「抜けている条件はない?」を洗い出してもらう
- 何時間も原因が分からない不具合。 どこが悪いのか見当もつかない、という状態のとき
- 大きく作り替えるとき。 あちこちに影響が及ぶ変更を、まとめて任せる場面
逆に、こういう用事で最上位を使うのは、はっきりもったいないです。
- 「このコマンド、何をするの?」と聞く
- 誤字を直す、言い回しを整える
- ファイル名を規則的に変える、表の形式を揃える
- 前にやったのと同じ手順を、もう一度なぞる
「考えてもらう仕事」か、「やってもらう仕事」か。 この線で分けると迷いません。考えてもらうときだけ上げる、で足ります。
Claude Codeなら:/model を一度は開いてください
/modelと打つと、選択画面が出ます。2026年8月8日時点の管理人の環境では、こういう並びでした。中身はバージョンによって変わるので、参考として見てください。
1. Default (recommended) Sonnet 4.6 · Efficient for routine tasks
2. Sonnet Sonnet 4.6 · Efficient for routine tasks
3. Fable Fable 5 · Most capable for your hardest and
longest-running tasks · Uses your limits ~2×
faster than Opus
4. Opus Opus 4.8 · Best for everyday, complex tasks
5. Haiku Haiku 4.5 · Fastest for quick answers
注目してほしいのは3番、Fableの行です。 「Uses your limits ~2× faster than Opus(Opusの約2倍の速さで上限を消費します)」と、警告が添えられています。 最上位が速いのは計算力だけではない、ということです。
⚠️ そして、既定のままにはしないでください
もうひとつ、この画面には落とし穴があります。既定(1番)はSonnet 4.6です。
名前が「Sonnet」なので無難に見えますが、これは1つ前の世代です。Anthropic公式のモデル一覧では、現行のSonnetはSonnet 5で、画面に並んでいる4.6や4.8のほうが「Legacy」に移っています。選択画面が追いついていない、という状態でした。
古いほうを使い続ける不利は、賢さだけではありません。
- 同じ作業により多くのトークンを使います。 賢さで劣るぶん、やり直しや遠回りが増えるためです
- 単価も高いです。 公式の一覧によると、Sonnet 5には2026年8月31日までの導入価格(入力100万トークンあたり$2)が設定されていて、Sonnet 4.6の$3より安くなっています
つまり既定のままだと、古くて・賢くなくて・消費も多いほうを使い続けることになります。
新しいほうは、モデルIDを直接打てば使えます。
/model claude-sonnet-5
選択画面にも「For other/previous model names, specify with --model」と書かれているとおり、一覧に無い名前は、名指しすれば使えます。 指定すると「Custom model」として扱われます。
まずここに切り替えてから始めてください。 Sonnet 5は公式で「The best combination of speed and intelligence(速さと知能の最良の組み合わせ)」とされています。
この状況は、更新すれば解消するかもしれません。 大事なのは名前を覚えることではなく、一度/modelを開いて、既定が何になっているかを自分の目で見ることです。それだけで、古い世代を使い続ける事故は避けられます。
そしてFableは、難所だけで出す切り札に。単価も、公式の一覧ではSonnet 5の入力$2〜3に対してFableは$10です。常用すると、20ドルのプランはすぐ終わります。
⚠️ 選んだモデルは、次のセッションにも引き継がれます
これが、いちばん痛い落とし穴かもしれません。/modelの画面の説明文に、さらっとこう書いてあります。
Your pick becomes the default for new sessions
(選んだものが、新しいセッションの既定になります)
つまり——難所でFableに上げたあと、そのまま別の作業を始めると、Fableのまま走ります。 ターミナルを閉じて開き直しても、次の日でも同じです。
大したことのない用事を、いちばん高いモデルにやらせていた、という事故がこれで起きます。しかも気づくのは、たいてい上限が近づいてからです。
切り札は、使ったら戻す。 難所が済んだら/modelで下げる——これを癖にしておくと、静かに消えていく分がなくなります。
Codexなら:既定が最上位なので、下げる
こちらは事情が逆で、放っておくと重いほうになります。 OpenAI公式のモデル一覧によると、既定で使われるのはGPT-5.6 Sol——「Flagship GPT-5.6 model with the strongest capability for complex coding」、つまり一番上のモデルです。
日常的に使うなら、GPT-5.6 Terra(「Balanced GPT-5.6 model for everyday work」)に下げておくほうが長く使えます。もっと軽くていいならGPT-5.6 Luna(「Fast and affordable」)です。
切り替えは/modelで、起動時に指定するならcodex --model(-m)です。
つまり、Claude Codeは「既定から切り替える」、Codexは「既定から下げる」。 向きは違いますが、どちらも既定のままがいちばん損、というのは共通です。
順番の話:先に「やらないこと」を決める
上の一点さえ避けられれば、あとは工夫の話になります。減らせる量の多い順に並べるとこうです。
- 話題が変わったら会話を切る(
/clear。日々の消費にいちばん効く) - 頼み方を具体的にする(やり直しが減る)
- 直したいところはまとめて1回で言う。誤字程度は自分で直す(往復そのものが減る)
- 場面に応じてモデルを上げ下げする
つまり、モデル選びは「毎回悩むこと」ではありませんが、「上に固定しっぱなしにしない」ことだけは最初から、ということです。
このあたりを実践的にまとめたのがAIエージェントのトークン消費を減らすコツです。使い始めてから読み返すと、意味がよく分かる種類の記事だと思います。
つまずいたら
- 上限に達して待たされた — 事故ではありません。会話を切って、軽いモデルに落として再開してください
- どのモデルか分からない — たいてい画面のどこかに今のモデル名が表示されています。分からなければエージェント自身に「今どのモデル?」と聞けます
- 数字が気になって頼めない — 気にしすぎないでください。最初のうちは、練習に使ったぶんが一番安い投資です
頭に入れるのは、ここまで
「毎回ぜんぶ読み直されている」と、「最上位モデルに固定しない」。この2つだけ覚えて帰ってもらえれば十分です。
次はいよいよ、実際に頼んでみます。