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売上の9割がAI向けに——GPUが世界一の商品になるまで

深掘り

LLMがGPUを必要とする理由で、GPUがもともと絵を描くための部品だったことを書きました。ではその部品が、どうして世界でいちばん注目される商品になったのか。

数字を先に置きます。


売上の約9割が、データセンター向け

NVIDIAが2026年2月25日に公表した決算によれば、2026会計年度の売上は次のとおりです。

金額 前年比
全社の売上 2,159億ドル +65%
うちデータセンター向け 1,937億ドル +68%

全体の約9割がデータセンター向けです。ここには、AIの学習と実行に使われるGPUが含まれます。

この会社は、もともとゲーム用のグラフィックス部品を作っていました。 ゲーム用も今なお売っていますが、割合としては1割に届きません。主力商品が完全に入れ替わったわけです。

なぜ他社に乗り換えないのか

GPUを作れるのはNVIDIAだけではありません。それでも置き換えが進みにくいのは、ハードウェアではなくソフトウェアに理由があります。

『LLMがGPUを必要とする理由』で触れたCUDAが2007年に公開されてから、機械学習のソフトウェアは、ほぼすべてCUDAを前提に書かれてきました。 論文の実装も、公開されているモデルも、実務のコードも同じです。

つまり乗り換えるということは、十数年ぶんの蓄積を確かめ直すということになります。ハードウェアの性能差より、こちらのほうが重い(何が積み上がっているのかはCUDAとは何かで分解しています)。

同じことは他の分野でも起きています。 特定の道具を前提に資産が積み上がると、後から性能で並んだ製品が登場しても、簡単には移れなくなります。

作りたくても作れない

もう一つ、意外な事情があります。需要があっても増産できません。 そしてボトルネックは、多くの人が思う場所とは違います。

チップの製造というと「回路を焼く工程」を思い浮かべますが、Epoch AIの整理によれば、AI向けチップの生産を縛っていたのはその後の工程でした。

  • HBM(高帯域メモリ):GPUに大量のデータを高速で流し込むための特殊なメモリ。作れる会社が数社しかない
  • CoWoS:計算するチップとHBMを、1つのパッケージに積んで繋ぎ合わせる技術。台湾のTSMCが握っている

焼くところではなく、積んで繋ぐところが詰まっていた。 どちらも設備を増やすのに年単位の時間がかかるので、注文があっても急には応えられません。

買っているのは、ごく少数の会社

もう一つ押さえておきたい特徴があります。買い手が非常に限られています。

AI向けGPUの主な行き先は、大規模なデータセンターを持つ数社と、AI開発企業です。一般消費者に何億個も売れている商品ではありません。 少数の買い手が、巨額の設備投資として買っている。

これは強さでもあり、危うさでもあります。 買い手の投資判断が変われば、需要はまとめて動きます。消費者向けの商品のように、需要が細かく分散して支えられている構造ではありません。

数字は動きます

最後に但し書きを。この記事の数字は、いつまでも正しいものではありません。

時価総額でいえば、NVIDIAとAppleが世界一の座を行き来している状況が続いています(推移はこちらで追えます)。売上も四半期ごとに更新されます。押さえておきたいのは順位そのものではなく、「なぜそうなったのか」の構造のほうです。

  • 計算の形が合っていた(『LLMがGPUを必要とする理由』)
  • ソフトウェアの蓄積が乗り換えを止めている
  • 増産の制約が、焼く工程ではなく後工程にある
  • 買い手が少数の巨大企業に集中している

この4つは、数字が変わっても当分は変わりません。

まとめ

  • NVIDIAの2026会計年度の売上は2,159億ドル、うちデータセンター向けが1,937億ドルで約9割
  • もともとはゲーム用の部品の会社。主力商品が入れ替わった
  • 乗り換えが進まない理由は性能ではなく、CUDAを前提に積み上がったソフトウェアの資産
  • 増産のボトルネックは回路を焼く工程ではなく、HBMという特殊なメモリと、それを積んで繋ぐCoWoSという後工程
  • 買い手は少数の巨大企業。強さであると同時に、需要がまとめて動きうる危うさでもある

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