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手元のMacでLLMを動かせるかどうかは、メモリの量で決まる。2026年8月の新機種で、上限は32GBから512GBまで開いた

AIを、外のサービスに接続せず自分のパソコンの中だけで動かすやり方があります。仕組みと始め方は『手元のパソコン内で動くAI——賢さでは負けるが使い放題』にまとめました。

ただしその記事には、機種名が1つも登場しません。 必要なメモリの目安までは書いたのに、「では、どれを買えばいいのか」の手前で止まっています。

2026年8月25日、AppleがMac miniとMac Studioの新型を発表しました。選べる幅が大きく変わったので、ここで機種の話を書きます。

動かせるモデルの大きさは、メモリの量で決まる

モデル——AIの本体にあたる、学習した結果が詰まった1つの大きなファイルです——を手元で動かすとき、そのファイルは動作中ずっとメモリに読み込まれたままになります。 LLMも画像生成AIも、実体はこのファイルです。「規模の大きいLLM」とは、このファイルが大きいという意味になります。 つまりメモリに収まらないモデルは、そもそも動きません。 速いか遅いか以前の話で、ここが最初の関門です。

そのファイルの中身は、学習によって値が決まった、膨大な数の数値です。この数値の1つ1つをパラメータと呼びます。LLMの名前に付く「12B」「31B」という表記は、このパラメータが何個あるかを表しています(Bは10億を意味するbillionの頭文字なので、31Bなら310億個)。詳しくは『有名人のことは詳しく、無名な人のことは知らない——LLMの「知っている」の正体』に書きました。

この個数は、モデル全体の合計です。 学習が終わった時点で値が固定されるので、どんな文章を入力しても、ファイルの中の310億個は変わりません。 必要なメモリをファイルの大きさで測れるのは、そのためです。

なお、新しめの大きなモデルには、毎回すべてのパラメータを動かすわけではない作りのものがあります(MoE、英語では Mixture of Experts)。層の中に担当違いの部品を何組も用意しておき、語ごとに一部だけを働かせるという仕組みです。それでもメモリの見積もりは変わりません。 どの部品が呼ばれるかは事前に決まらないので、結局ファイル全体をメモリに載せておく必要があるからです。変わるのは、1語あたりの計算量のほうです。

もう1つ、紛れやすい数があります。「1つの語を1024個の数字で表す」といった話に登場する数(→『言葉が数字になるまで——ベクトルと、意味の学習』)は、並びの長さであって個数ではありません。語ごとのその数値も学習で決まるので合計には含まれますが、大部分を占めているのは、どの語が来ても共通に使われる部分です。

必要なメモリの目安は、そのモデルをダウンロードしたときのファイルの大きさです。

パラメータの個数 ファイルの大きさ
45億個(4.5B相当) 約10GB
120億個(12B) 約8GB
310億個(31B) 約20GB

パラメータの個数と、ファイルの大きさが素直に比例していません。 1個あたりを何ビットで持つかが、モデルによって違うためです。精度を落として小さく持ち直したものが配布されており、同じモデルでも複数の大きさが選べます。

これに加えて、作業用の余裕と、macOS自身が使う分が要ります。 搭載量の全部をモデルに充てられるわけではありません。

作業用の分は、やり取りが長くなるほど増えます。 入力された文章は、モデルの中で数値の並びに変換されながら処理されますが、その途中の数値はパラメータとは別に置き場所が要り、文章が長いほど嵩みます。 短い質問なら気になりませんが、長い会話を続けると、メモリの消費として表れてきます。

MacにはCPUとGPUが同じメモリを共有するという性質があります(→『賢い数人より、単純な2万人——LLMがGPUを必要とする理由』)。GPU用のメモリを別に買い足す構造ではないので、搭載メモリの多い機種ほど、そのまま大きいモデルを載せられます。 機種選びがメモリ選びとほぼ同じ意味になるのは、このためです。

新機種のメモリ上限は、32GBから512GBまで開いた

2026年8月25日発表、発売は9月22日。日本での価格は税込みです。

機種 チップ メモリ上限 メモリ帯域 価格
Mac mini M6 32GB 170GB/s 149,800円
Mac mini M5 Pro 64GB 307GB/s 299,800円
Mac Studio M5 Max 128GB 614GB/s 419,800円
Mac Studio M5 Ultra 512GB 1.2TB/s 949,800円

512GBの構成だけは10月後半に加わる予定とされています。

価格は各機種の最小構成のものです。メモリを上限まで積むと、この額では収まりません。 表の「メモリ上限」と「価格」は別々の行き先を指しているので、そこは読み替えが要ります。

なお米国の表示価格は税別、日本の表示価格は税込みです。単純に比べられる2つの数字ではありません。

512GBが話題になったのは、メモリに載せられるモデルの規模が変わるから

上限512GBという数字が注目された理由は、個人のマシンのメモリに載せられるモデルの規模そのものが変わるためです。

Appleは新しいMac Studioについて、「巨大なLLMを、まるごと端末内で動かせる」と書いています。上の表で「310億個で約20GB」という目安を挙げましたが、公開されている大きなモデルはその十数倍の規模に達しており、これまでは個人のマシンのメモリに収まる話ではありませんでした。

どれくらいの規模のモデルまでメモリに載って、どこからが載らないか。その線が動いたというのが、今回の発表の中身です。

ただし、949,800円という価格も同時に提示されています。 メモリを上限まで積めばさらに上がります。個人が趣味で手を出す価格帯ではなく、研究や業務の道具として選ばれるものです。

AIの応答の速さを決めているのは、メモリの量だけではない

もう1つ、量とは別の数字が表に混ざっています。メモリ帯域です。

  • メモリの量は、載るかどうかを決める
  • メモリ帯域は、どれだけ速く応答するかを決める

ただしメモリの量も、速さを左右します。 空きが少ないまま動かすと、足りない分を保存領域で肩代わりする動きが起き、そこで大きく待たされます。 パソコンを何年か使っていれば、メモリが埋まったときの極端な遅さに心当たりがあるはずです。「収まる」と「余裕がある」は別で、ぎりぎり収まる構成は遅さの側にも跳ね返ります。

モデルを動かすとき、マシンはメモリに置いた大量の数値を、文字を1つ生成するたびに読み直します。 読み出しの速さが頭打ちになると、そこが待ち時間の正体になります。表の170GB/sと1.2TB/sは、同じモデルを載せたときの応答の速さが、およそ7倍違うことを意味します。

2つを混同すると、選び方を間違えます。 メモリを積んだのに遅い、という状態は普通に起こります。

管理人のMacは24GBで、モデルをメモリに収めるには足りている

管理人が使っているMac miniは、M4でメモリ24GBです。新型ではありませんし、上の表の一番下の行とは比べるべくもありません。

それでも、上の目安表の上2つは24GBのメモリに収まります。管理人がこのMac miniで動かしているのは、画像生成と、文章のベクトル化——文章を数値の並びに変換して、検索や分類に使えるようにする処理です(→『言葉が数字になるまで——ベクトルと、意味の学習』)。

画像生成のほうは、モデルをメモリに読み込ませて、キャラクターを覚えさせる学習まで走らせています。 その記録が『絵7枚と一晩11時間で、手元のMacは自作キャラクターを描けるようになった。ただし髪型は揺れた』です。一晩かかりましたが、動きはしました。

逆に、このサイトを作る作業では、手元のAIを一度も使っていません。 そちらはクラウドのモデルを使うAIエージェントの担当です。手元で動かすAIには向く仕事とそうでない仕事があり、24GBで足りるかどうかも、何に使うかで変わります。

メモリの量もありますが、24GBの構成でむしろ先に問題になったのは待ち時間のほうでした。 上の学習は、一晩で11時間かかっています。

ただし、この11時間の内訳は切り分けていません。 計算そのものの重さと、上に書いたメモリの圧迫による遅さは、両方が混ざっている可能性があります。 分かっているのは、かかった時間だけです。24GBのメモリ構成で突き当たるのは、そういう壁です。

24GBへの評価は、「会話が成立する速さ」では下していない

ここは分けて書いておく必要があります。管理人は、手元のAIと文章でやり取りする使い方を一度もしていません。 画像生成にも文章のベクトル化にも多用してきましたが、どちらも頼んで、待って、結果を受け取る形の処理です。返事が来るまでの速さを気にする場面が、そもそも発生していません。

そのうえで、「単純作業を大量に回す環境としては最高」というのが管理人の評価です。同じ処理を何百回も流すような仕事なら、24GBのMac miniで足りているということになります。11時間という待ち時間も、一晩放置して朝に受け取る形なら、待ち時間として数えなくて済みます。

逆に言うと、この記事は「24GBで対話が成立するか」には答えていません。 手元のモデルとチャットのように往復したい場合の速さは、測っていないので書けません。同じ24GBでも、対話に使うつもりなら別の確かめ方が必要になります。

選ぶときに見る順番は、量・帯域・価格

まとめると、見るべき数字は3つです。

  1. メモリの量 — 動かしたいモデルがメモリに収まるか。収まらなければ何も始まらない
  2. メモリ帯域 — 待たされるかどうか。同じモデルでも体感が変わる
  3. 価格 — 上の2つは、そのまま価格に比例する

先に決めるのは機種ではなく、動かしたいモデルです。 そのファイルの大きさが分かれば、必要なメモリはほぼ決まり、機種は自動的に絞り込まれます。逆の順番で選ぶと、メモリの足りないマシンか、過剰なマシンのどちらかに行き着きます。

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